人生の学校「フォルケホイスコーレ」とは ~デンマークでの学び・日本での開校の軌跡~
月に一度は公開講座にお越しください♪
今夏は探究アカデミアの名称でお送りしているオンライン公開講座の10月版をご報告します。
10月になり一気に冷え込みを見せた東京の校舎ですが今回は日本の最北端北海道からゲストをお呼びしての公開講座となりました。
イベントは、今までにも類を見ない質問の量と質に踊り、画面上は冷え込むどころか熱気を帯びた90分となりました。
今回のテーマは、
人生の学校「フォルケホイスコーレ」とは ~デンマークでの学び・日本での開校の軌跡~
| By 精華学園高等学校 探究アカデミー東京校(錦糸町校)
でお届けした90分となりました。
今回のイベントへの経緯と概要は以下のようなものでした。
探究アカデミー東京校は「一人一人の個性に合わせた教育をデザインする学校」。
当校はこれまでに、探究アカデミアというオンライントークイベントを開催し、様々な教育環境を紹介してきましたが、今回はデンマーク発祥のフォルケホイスコーレを北海道東川町に開校した遠又香さんをゲストスピーカーにお迎えして、以下の中項目を視聴者参加者様に伝えたい思いで春から準備を進めてきました。
☆ デンマークのフォルケホイスコーレってどういった学校でしょう?
☆ フォルケを日本版で開校したらどうなったのでしょう?
項目を挙げて会議を重ねて、興味津々の講演会の設計をしてきました。
上述のデンマークのフォルケホイスコーレとは、先生も生徒も同じ学校内で暮らしながら学ぶ全寮制の学校です。
大学進学前にやりたいことを見つけたい、職種を変更し新たなチャレンジをしたい、など自分探しのための場所と考えられています。
試験なし、成績なし、対話主体の授業形式が大きな特徴であり、遠又さんはそんな自由な学校に魅了されて北海道の地に日本版フォルケの設立を夢見たそうです。
具体的には彼女が日本の企業で忙しく働いていた25歳の時、デンマークのフォルケホイスコーレに出逢い、日本にもこのような「人生の学校」を設立したいと考えたのだそうです。
デンマークでの学びをヒントに北海道に設立した大人の人生の学校は、School for Life Compathという活動名で各種宿泊滞在型の教育コンテンツを提供しておられます。
これまでいくつものカリキュラムを実践してこられたそうですが、いったい参加者たちにはどのような変化が見られるのでしょうか?
当日は中高生や保護者に加えて教育関係者の方々はもちろん、教育ベンチャー設立を夢見る大学院生も聞きに来ておられました。
ここで登壇ゲスト様について今一度、詳細の説明を記載します。
【登壇ゲスト経歴】
遠又香様
(株式会社Compath Co-Founder/東川町在住)
東京都生まれ、慶應義塾大学総合政策学部卒。
15歳のときにアラスカの2000人の村に単身留学。現地でのキャリア教育に感銘を受け、日本の教育をよくしたいと志す。大学時代は高校生、大学生向けのキャリア教育を提供するNPO法人で活動。大学卒業後は、ベネッセで高校生向けの進路情報誌の編集者として働いた後、外資コンサルティング会社に転職。日系企業の働き方改革支援プロジェクトや教育系のNPO法人のコンサルの仕事に従事。2020年4月に株式会社Compathを設立。2020年7月より北海道東川町に移住し、デンマークのフォルケホイスコーレをモデルとしたSchool for Life Compathという大人の人生の学校を運営している。
当日はいつもよりも参加者様の発言を多くしたいという登壇者様のアイデアもあり、ブレイクルームが設けられて、各自の会の参加目的などが話されました。
たくさんのブレイクルームができた中で筆者が入ったのは一つでしたが、その中でもとある大学の大学院で教育分野に興味を持ち、教育ベンチャーのスタートアップに挑戦している若者がいました。
既存の学校教育は限界を迎えているんだ、教育学部出身者だけが学校の先生になったり教育に携わるのも壊すべき固定価値観だ、と熱い想いを語っているのが印象に残りました。
同じ大学の研究室から複数の学生が参加しており、みなさんから教育を変えるべき熱意を感じました。
また、とある県の離島から参加された小学校の先生もおられました。
都会の教員生活で紆余曲折があったようだが今は特別支援学級やスポーツ教室など離島にてやりたい教育を爆発させているのだと笑顔で語っていました。
そしてみなさまが共通して情報を欲していました。
講演はアンケートから始まりました。
問)フォルケホイスコーレを知っていますか?
知っている方はもちろんいたが、今回は初めて聞いたと答えた方も多く、今日の参加者は知らない方が多いようでした。
逆に知人がフォルケホイスコーレ事業の立ち上げを行っています!という方もいました。
みんなに共通しているのは「様々な教育の価値観、あり方、手法を知りたい」ということだと思いました。
遠又さんはもともとは東京都にゆかりがあるものの、幼少期はロシアに住んでいて今は北海道在住ということで寒いところに縁があるそうです。
高校生の時から偏差値で学校や人生が決まることにもやもやしていたそうです。
そして大学在学中から教育系NPOに参画して、教育の名だたる大手企業、コンサルティング系の世界にも挑戦したようです。
こういった経歴や思考履歴を耳にするととにかく素晴らしい経歴ですね、となるのでしょうけど、彼女自身は誰かに勝とうとして、優秀になろうとして努力をしたというより日本の教育を憂愁し、自分にとって何ができるかを常に”じぶんごと”として模索してきたにすぎないのでしょう。
日本の失われた○○年と言われる一方でこうした10,20代が今着実に増えていることも感じます。
彼女が社会人生活がむしゃらに走っていたころ、こう思ったそうです。
「旅に出よう」 「最近、幸せ足りてないかも」
この合言葉の元、のちに共同起業者となる安井様とデンマークへと旅立ったそうです。
デンマークで出逢ったフォルケに一目惚れして、北海道の地でそれを展開しようと夢見始めました。そしてその夢は形になり、成功に向けて現実になりつつあるのです。
このまま社会人としてバリバリ働いていても面白いけど、窮屈だし、このままでは、かわいくないお婆ちゃんになってしまうのでは(笑)と危惧した瞬間があったというエピソードも印象的でした。
彼女の運営する学校のビジョンは「私の小さな問いから社会が変わる」です。
コンセプトは「余白を取りともに暮らし学ぶ」・「地域に暮らし、社会の手触り感を取り戻す」
フォルケはデモクラシーの学校とも呼ばれていて、学習をするというより、北海道東川町という町に参画するというイメージが近いのだと話を聞いていて思いました。
学校には1週間から10週間の様々なコースが用意されているようです。
2022年度の年間コーススケジュール/CompathのHPより
ワーケーションコースは、リモートワークと並立させながら、平日はリモートワーク or 選択授業or 自由時間、土日はプログラム参加できるというコースのようです。
舞台となっている北海道東川町は工房や写真が活発な街であり、その特性をふんだんに生かし、表現をいかんなく発揮するプログラムが豊富です。
試験も資格もないとは、小さいときにはまったゲゲゲの鬼太郎の歌みたいです。本場のデンマークにおいては試験も資格もないし、やってはいけないことが法律に定められているくらいであるとのことです。
民主的な在り方を共に暮らしながらはぐくむためには、対話をとても大切にしているといいます。
学校は全寮制の生活です。正直言って、大人になってからの全寮制の生活というのは、実に面倒くさいし大変であり、自分の考えを変えたり調整したりしなければならない。だからこそ対話をとても大切にして民主的なことを体感するのが成長につながるのでしょう。遠又さんは正直に共同生活の面白い部分と大変な部分をを魅力的に語ってくれました。
フォルケが作られた背景には、デンマークが絶対王政からの民主化に向かった際の歴史と色濃くつながっています。戦争で肥沃な土地を失い、国土が小さくなったことから、残されたのは「人」しかいない、民度を上げるための学校として作られたのが始まりです。
180年、デンマークが学びに投資をし続けた結果、下記のような、社会を作るプロセスが作られたのではないかと話していました。
その中でもフォルケという場所では特に、「あなたそのものが大事な資源であること」・「社会は作れる、だから声を聴かせて」「ダイアログとコミュニケーションってめんどくさいけど根気よく続けよう」といったことが大切にされていることに感動をされたそうです。
わたしから始まるサステナビリティ。刺さる言葉ですね。
とにかく「わたし」が多いのがフォルケで大切にされていることのように感じました。
誰かがやるのでなくて 自分が、わたしが社会を変える わたしが地球を守るという想いが存在しています。それは犠牲の上に成り立つのではなく自分も大切にしていくこと。自分の幸せを作れない人に社会の幸せは作れないですよね・・・と語ってくれました。
またCompathを設立する背景で、東川町との出会いは幸運であったようです。この町は北欧と雰囲気が似ているそうです。そして近年は人口が伸び続けていると!
東川町では新しい取り組みに関して前向きな自治体であることからうまく運営が進んでいるようです。
一方で、日本全体としては以下のような課題もあると指摘していました。
① 学びの個人負担が大きい
② 余白を取るハードルの高さ
③ 社会の手触り感が薄い
まずは東川町という町から事例を作ることにチャレンジをしていくようです。
今は校舎を東川町の施設を間借りしながらコース運営をしているのですが、
ついに校舎設立の計画の見直しが立ったそうです。なんて応援力のある町なのでしょう。
School for Life Compathは新章へ突入しつつあるようです。
あっという間の講演は前半戦が終わり、イベントはブレイクルームに再度分かれての意見交換と感想共有になりました。質問もたくさん出ました。
~チャット感想抜粋~
遊ぶように学ぶことの大切さ、ステキです。地域とつながることで豊かさが育まれますね。余白の大切さ、痛感してます❗
~質問タイム~
お金はどのくらいかかりますか?
プログラムの内容はどんな感じですか?
今の日本の国からの協力体制だと、地域との協力や連携がないとうまく成り立たないようなイメージを受けたのですが、今後広げていくにあたってどのような協力体制を築いていく構想なのでしょうか?
フォルケに通うと何が変わる?
哲学、音楽、アート、スポーツを学ぶとありますが、デンマークではどのような内容だったのでしょうか?デンマークらしさのような内容はありましたか?
親や先生などに勧められて参加するような方はいらっしゃいますか?
みなさん、自分に必要だ、参加したいと思って自主的に参加している方々なのでしょうか?
その中でも大学院生が教育ベンチャーを立ち上げるために本日のセミナーを楽しみにしていたということでこんな質問を寄せてくれました。
Compathを立ち上げて軌道に乗せるまで大変だったことを教えていただきたいです!
それに対して遠又さんが最後にしんみり振り返るように語ってくれました。
いっぱいありますがw、集客が大変でしたね。集客しながらの授業づくりは大変でした。 今は安定して紹介やリピーターさんが出て、メディアに取り上げられると安定感が増して信頼感も生まれますから、集客はやりやすくなりました。
認知と信頼性が日本では特に大切なんだなって思いました。
気負うことなく自分らしい生き方を北海道の地で実践されている遠又様に胸が熱くなる90分(準備してきた筆者ら職員は半年間)でした。
参考情報
HP:https://schoolforlifecompath.studio.site/
Instagram:https://www.instagram.com/sfl_compath/
note:https://note.com/compath/
Facebook:https://www.facebook.com/schoolforlifecompath/
Twitter:https://mobile.twitter.com/sfl_compath
【今後の探究アカデミーからのお知らせ】
年末まで公開講座が用意されています♪
【探究アカデミーの親子アドバイザー有澤和歌子さんからのお知らせ】
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